元町のとある定食屋さんで晩飯を食べていると、点いているテレビから「マイホームを手に入れよう!」と声高に叫ぶ番組が始まった。
なんのことはない、住宅販売会社が提供から放映までやっている番組だ。あの緑のもじゃもじゃキャラクターで有名な会社だ。
番組内でマイホームを購入するまでの流れが取り上げられていた。住宅販売会社のカウンターで相談できるらしい。
「では、借り入れ限度の算定をしますので、現在の収入を教えてください」
「そうですねえ…500万てところでしょうか?」
「はい、かしこまりました」
そうなのか、家を建てるには年収500万は必要なのか。稼いだこともない数字が出てきて面食らった感はある。
まあそもそも家を建てようなんて思いもしないし、それよりも市民県民税やら年金やらの支払いでひいひい言ってるからそれどころじゃない。貯金もできるようでなかなかできない。
自分の稼いでいる年収よりも大きな数字が動くこともある職場なので、割とつらいときもある。早いとこそういう生活から抜け出したいのだけれど、気持ちばかりが焦ってしまう。
転職しようにも、他の業界で活用できそうな資格はないし、何より今いる業界が好きだから動くことはないと思う。少しでも条件の良い方へ良い方へと移動はしているんだが、それでも500に届くことはない。それが現実。
まあこのまま一生賃貸暮らしでもいいかなーなんて思ってるし、住めば都という言葉通りの暮らし方をしてるのでマイホームは無くてもいい。
ただ、自分とは異なる世界があるんだなーとなんとなく思ったし、定食屋の食事はあまりおいしくなかった。とぼとぼしながら家に帰った。